乾電池でゆで卵 (追試投稿その1)


※ 本稿は、茂泉氏と野口氏による「乾電池でゆで卵」の追試の内容を、投稿に基づいて突撃実験室が加筆修正したものです。



完成図...
ここでは突撃実験室が行ったのと、ほぼ同様の実験を行ってみた。本当に、単一のアルカリ乾電池一個では、ゆで卵を作ることはできないのだろうか?


〔突撃註:突撃実験室が行った実験では、できなかった〕



 単一電池の発生しうる総熱量

ともかく、単一型アルカリ電池でどの程度の熱を発生させられるのか、計算してみることにした。ところが、普通に市販されているアルカリ電池には、容量など示されていない。比較的? 似たものとして NiCd や NiHM がある。これらのパッケージには容量が明記されていて、前者が 4,000mAh、後者が 7,000mAh ぐらいらしい。電圧も違う二次電池と比べてしまって果たして良いものかどうかはギモンである・・・が、細かいことは気にしないコトにして話を進める。

さて、単一型アルカリ電池の容量だが、一次電池の根性みせてみろってことで、10,000mAh である (!) としよう。数字の上では 10A なら 1時間、1A なら 10時間放電できる容量だ。取り合えず「理想値」の計算なので抵抗 1Ωに平均 1V が架かるとすると、1A で 1J/Sec。これが 10時間で 36,000J。発生した熱を全て 100g の水が吸収したとすると、水の比熱を 4.19J/kg として 36000 / (4.19 * 100) = 85.9、85.9 度も上昇させるコトが出来るわけだ。最初の水温が 20度なら、何とか沸騰するまで加熱できることになる。

しかし、突撃実験室が行った先の実験では、沸騰には遠くとどいていない。なぜか・・・上記の計算はあくまで理想状態における総発生熱量であって、放熱がゼロでヒータ以外の抵抗がゼロで電気エネルギーが全て熱に変換され水に吸収された場合で、おまけに蒸発すら起こらなかった場合のハナシだ。

突撃実験室が「結果はやる前から分かっているようなものだ」としながらも、あえて計算など無粋なことをせず、神風に依ったのはこの辺に原因がある(と思う)。

〔突撃註:概ねその通りです(仮定の仮定で計算するのも何だし・・)。〕

そんなわけで、細かいことにこだわらず、全力で持てる熱量の全てを卵に注いでみようではないか。



 実験開始

保温容器... 保温容器は本実験の要。最大限の努力をせねばならない。写真は、発泡スチロールとアルミをつかった保温シートを材料にして、筒状にしたもの。蓋も同じ素材を5枚重ねにして用い、シリコンコークでシールしてある。これに直接、水と卵を投入することにする。

でんち... 先人である、突撃氏に敬意を表して (?) 同じように電池ホルダには万力を使用した。確かにナイロン製の電池ホルダや黒いプラ製のホルダはダメ過ぎて使えない。絶縁体として某店のかわら版を折り畳んで挟んである。

たまご... 卵はコンビニで買った。大きさや重量に関する記述はないが、感じとしては特に大きくも小さくもない程度。重さくらい量りたかったが・・・

ヒータ... ヒータといえばニクロム線ということで用意してみたが、抵抗あたりの長さが短く、適当な加温面積が得られなかったので、やはり金属被膜抵抗を使った。抵抗値はとりあえず 0.5Ω。

玉子をセット... 卵をセットし、水を入れる。
卵は尖った方を下にしてヒータのスペースを確保し、水は卵の先端?が少し出る程度にした。
容器右上の線は水温測定用熱電対。

準備完了... 準備完了。
左のテスターは電圧レンジで電池両端に接続。
右のLCD付きのむき出し基板は、秋月電子のデジタル温度計キット。
マニュアルに従い、摂氏0度と摂氏100度で校正してある。

計測開始... 計測開始。電源投入からすぐ、温度計の表示が上がってゆく。

計測状況... 今回の実験ではデータロガーなる、文明の利器は用意できなかった・・・ので、ひたすらメモることになった。
電圧、温度を一定時間ごとに記録してゆく。

42度到達!... 遂に、突撃実験室の最高温度に到達!・・

しかし、電源投入から250分以上経過したいま、電池の電圧は 1.0Vに満たない。
結局、これ以上の温度上昇は確認できなかった。
350分まで我慢して、卵を割ってみる。
さあ、ゆでたま・・





結果... そう、なんというか・・・ぬるいです。

抵抗2結果... ・・・めげずに、今度は合成抵抗 0.4Ωで。
さすがに、0.5Ωのときよりも温度の立ち上がりが早く、一瞬期待するが
電圧もその分、低下の速度が速い。

最高温度達成... 結局、最大温度は摂氏43度・・・

グラフ... 結果をグラフに示す。


 実験終了・・・。

なんとか摂氏50度ぐらいは到達できるのではないかと期待していたが、
摂氏43度をピークに水温は低下してしまった。
これではゆで卵への道は限りなく遠い。

保温が足りないのか?確かに保温容器の外側が暖かくなっていた。要改善。
テスター接続がいけなかったのか?アナログテスタは内部抵抗が小さいし・・・
卵がちゃんと室温になっていなかったのか?買ってきて直ぐだったし・・・

注意... それとも、
万力で絞りすぎたのが原因だろうか。


ともかく、このままでは終わらせない。
いつか決着を付けることを誓い、実験を終了した。



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2001/06/12 公開


制作 − 突撃実験室