固めるテンプルの謎
固めるテンプルというものを買ってきた。
天ぷら油は下水に流したりしては行けない。こいつは、そんな廃棄の煩わしい天ぷら油を、ゲル状に固めてしまうというもの。固まったものは、燃えるゴミとして捨てることができるので大変便利だ。お値段は、油6リットル分で400円...ちょっと高い気もするが、中身は10本の子袋になっていて、一回に使う分量は40円ほど。捨てるだけのものに使う金としては勿体無い気もするが、簡単に油が処理できるので、安いと言えば安いかも。しかし、固めるテンプルの実体は、何の変哲も無いただの白い粉だ。そんな物を油に流し込んで、なぜ油が固まってしまうのか? 実に不思議な粉だ。これは検証してみる以外に無い。
油脂を固める方法には色々とあるが、冷やすことや、鹸化させることなどが考えられる。冷やすというのは、例えば解けたバターを冷やせば固まるというだけの極単純なことだが、サラダ油はそんな上手く行かないので駄目だ。鹸化というのは、油脂に塩基を反応させ、石鹸を作ってしまうことだ。よく廃油に苛性ソーダを混ぜて家庭用石鹸を作るという話を聞くが、要するにあれのことだ。だが、鹸化反応では油脂は直ぐに固まらない上、家庭用の廃油処理剤に危険な苛性ソーダが含まれているとは考えにくい。突撃実験室ならまだしも、普通のオバチャンが使う商品なんだから以ての外だ。
しかし、原材料名は箱にちゃんと書いてあった。ご覧のように、天然油脂系脂肪酸と書かれていることから、廃油処理剤でありながらも、こいつは油の一種だったのだ。それも火気厳禁と書いてある。燃えるゴミとして捨てるものなので燃えなければ困るものだが、敢えて注意書きをするぐらいだから、余程良く燃えるのだろう。むやみやたらと燃えるものに注意を書いていったら、ティッシュペーパーだって燃えるから火気厳禁だ。
さて、今日は廃油を作るために..いや、天ぷらが食いたくなったので、大量に天ぷらを揚げた。ほら海老だ、(安物の)ブラックタイガーだぜ。全部一人で食うのだ。すごいだろー(すごくない)。そんなことをわざわざ写真に撮って書くところが超貧乏だろー。どうだ!! さて、海老を揚げ、その他に鰯やカボチャも揚げたので、かなり油が傷んだ。これで実験材料となる廃油の完成だ。
説明書には油が熱いうち(80度以上)に処理剤を入れろと書いてあるが、低温だと原材料である脂肪酸が融けないからだと考えられる。そのため、揚げ終わった直後に処理剤を入れた。処理剤は入れて軽く攪拌すると素直に溶るが、その直後の廃油に様子の変化はない。ここで待っていても仕方がないので、取り敢えず天ぷらを食うのだ。
約1時間後。油の温度も下がり、このように固まっていた。説明書には40度以下でゼリー状に固まると書いてあるが、ゼリー状というよりは蝋のような硬さになっていた。ゼリー状であればフライパンからぺろんと剥がれたのだろうが、ヘラを入れてもそう簡単には剥がれない。結局、塊の端を突ついて穴を開け、ヘラで押しながら滑らせて剥がした。後は捨てるだけ、便利で簡単だ。
さて、この魔法の粉ので油が固まる原理だが、これが脂肪酸であることがミソだろう。脂肪酸には色々な種があり、この処理剤に含まれている脂肪酸は比較的高い温度では融けるが、常温では固体になるものと思われる。サラダ油は常温では液体だが、この処理剤を混ぜることにより、サラダ油を道連れにして固形化しているものと考えられる。なかなか良いアイデアだ。ならば、熱せれば溶けるが、常温で固形になるような物質を使えば同じ効果が得られるわけだ。そこで突撃実験室が目を付けたものは、牛脂だ。
近所のスーパーの食肉売り場で無料で配られている牛脂を貰ってきた。
どうでも良いが、鹿児島和牛のものであるらしい。
少量のサラダ油に、固形の牛脂を放り込んで電熱器で加熱してみた。
加熱後。殆どが融解したが、牛脂の不純物が溶けずに残り、熱で焦げてしまった。
これを冷やすとどうなるか? 時間短縮のため、水冷してから冷蔵庫に入れた。
冷蔵庫から取り出したところ。蝋のように固体化した。
ビーカーを逆さにしても落ちてこない。
また、常温に戻した後も、特に液体に戻ろうとする様子はない。
ついでに、鹸化の実験もしてみた。
数日前に、透明なサラダ油に苛性ソーダを入れて、加熱してみた。直ぐには反応しないので、寝かすこと今日まで。このようにもろもろとした物が底に沈殿しているが、完全に固体化するには至らなかった。この白っぽいものが石鹸のようなものと思われるが、苛性ソーダをどばどばと入れてあるので、間違ってもこれで手を洗おうとは思わない。
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