DSUをバラす


NTTのDSUをバラしてみた。最近では、自宅の回線をISDNにした方も多いのではないだろうか。巷で売られているTAもDSU内臓というものが多く、単体のDSUは見たことすらないという方もいると思う。DSUの実体はLEDも何もない、ただの箱であり、どういう仕事をしているのか理解しづらい面もある。だが、DSUはISDNに加入するためには欠かせないものだ。気難しい彼等は何も語らないが、そんな彼等を理解するために、このバラシ記事はある。

巷では、インターネットのアクセス回線としてISDNが注目されているが、一般名称としてのISDNには、非常に幅広いものを指すので、それがどのようなものであるかを一言で説明することは出来ない。現在、NTTが家庭向きに提供しているのサービスは、NTT商品名ではINSネット64と呼ばれているものであり、これが一般的にISDNと呼ばれているものだ。2Bチャンネル+Dチャンネルという、仕様を持ち、これは基本インタフェースと呼ばれることもある。ここでもISDNは、INSネット64が前提であることとする。

INSネット64のように既存の加入者線でデジタル加入者線伝送を行なう場合には、加入者宅や交換局に回線終端装置を設置する必要がある。いわゆるDSUとは、加入者宅側に置かれた回線終端装置のことで、Digital Service Unitの略である。ちなみに、交換局側に設置されるものは、OCU、Office Channel Unit と言うらしい。NTTのDSUの正式名称は、デジタル回線終端装置というようで、INSネット64に使われているものは何種類か存在するが、機能はどれも同じだ。こちらに写真がある。

突撃実験室では、家にあったSL-144K型Cという比較的新しい(96年製)タイプに加え、会社の人が要らなくなって宙に浮いていたSL-144K型Bと呼ばれる古い(92年製)DSUを入手した。SL-144K型Bの方は、それ用に作られた配線用の筐体に入っており、寸法も厚みもかなり大きい。しかし、昔はNTTのものと言えばこれぐらいしかなく、価格は7万円ぐらいしていた。いつの頃か徐々に値下がりし、今でこそ2万円程度になったが、それでもDSU内臓型のTAの価格からすれば、高すぎると思う。


(写真をクリックすると小さいのを表示します?)

左)SL-144型Cデジタル回線終端装置
右)SL-144型Bデジタル回線終端装置+筐体



C型の方はただの箱であり、それ自体がDSUである。配線はモジュラジャックのみで行なうようになっている。一方で、古いB型の方は筐体の蓋を開けると始めてDSU本体がお目見えする(ネジ止めされた所よりも上の部分)。そして、筐体にはモジュラジャックと共にネジ止め配線用の端子台もついている。早くにISDNに加入したところでは、NTTから来た線と、宅内に配線する線をここに直接ネジ止めしているケースを見かける。



さらにバラしたところ。C型の方は日立製で、B型の方は富士通製のようで、見かけによらずサイズはB型の方が小さい。いずれも、乗ってる部品は基本的に同じで、細かいものではバリスタやトランスなど。ICは主なものが二つ、目立つのはケミコンとデコデコなどとなっている。プロトコルの処理は二つのICがやっているものと思われるが、それが何であるかは、型番からは分からない。ゲートアレイのようなものかもしれない。右側の写真は、Bの富士通製の拡大図だ。抵抗がやたら多い。




さて、上図はISDNのインターフェース規定点を示したものだ。ISDNでは、加入者宅内でさまざまな装置を接続することを前提しているので、上記のように参照点にアルファベットをつけて識別している。網終端装置は二段に入れることができ、NT1NT2として区別されている。前者はいわゆるDSUのことで、後者は構内交換機などを指す。仕様ではNT1の交換局側をLI点、加入者側をT点と呼び、更にNT2の加入者側をS点としているが、一般家庭であればNT2は存在しないことが普通だ。S点もT点も同一のインターフェース仕様を持つことから、併せてS/T点と呼んでいることが多い。

S点にはISDN機器やターミナルアダプタなどを接続する。ISDNに直接接続し、それ自体で機能を提供するような端末(G4FAXなど)はTE1と呼ばれており、ターミナルアダプタのように、ISDNには直接接続できない機器(アナログ電話機、G3FAX、パソコンなど)の接続を可能にするための装置はTAとして、別々のもとして扱われている。そして、ターミナルアダプタを介して接続される端末のことをTE2と呼び、TAの既存端末点をR点と呼んでいる。従って、TAが無いとISDNが使えないと言う人がいるが、直接ISDNに繋がるような通信機器があれば必要はなく、それは間違いである。

ISDNは全二重で通信を行なえるが、既存の二線式の電話網を用いるため、上りと下りの信号は同一の伝送路を流れる。INSネット64では、伝送路を時分割して全二重を実現しており、上りと下りの信号が交互に行き交うところから、俗にピンポン伝送方式などと呼ばれていたりする。信号のビットレートは意外と高速で、あのチャチな銅線の中を、320Kbpsの信号が流れている。内訳を説明すると、Bチャンネルが2本とDチャンネルが1本あるから、64Kbps+64Kbps+16Kbps=144Kbpsとなるが、時分割全二重通信を行なうので、その速度で送っていては間に合わない。倍にプラスアルファを加えたの320Kbpsが実際の伝送速度となる。ちなみに、DSUの電源は交換機から貰う。

DSUは、この時分割されたピンポン信号を元の信号に再生し、更にS/T点インターフェースを提供する。ここからは4線式の伝送路を用い、2本は送信のプラスとマイナス、残りの2本は受信のプラスとマイナスとなっている。ここでのビットレートは、送受信それぞれが192Kbpsだ。2つのBチャンネルとDチャンネルが、時分割されて流れており、144Kbpsより少し多いのは、フレーミングなどの余分なビットが挿入されるからだ。通信機器は、普段は制御用チャンネルであるDチャンネルにて着呼や発呼などの制御を行い、普通は通信通話のデータが流れるのは、Bチャンネルのみだが、Dチャンネルの空いた帯域を使ってパケット通信を行なうサービスも存在する。



ISDNのS/Tインターフェースは、バス配線することが可能だ。そのため、1本の回線に8台までの通信機器を同時に接続することが出来る。配線方法は至って簡単で、同一の回線上に機器を並列に並べて接続するだけで良い。ただし、バスの端には終端抵抗を入れる必要がある。これも簡単な話で、それぞれ受信と送信のプラスマイナス間に(つまり、端子名で言えばRAとRB、TAとTB間に)100オームの抵抗を入れればよいだけのようだ。古いDSUに一緒についていた2個口のモジュラには、しっかり終端抵抗がついていた。拡大写真の、端子の下の方に半田付けされているのが、それである。



参考資料:端子配置表

RJ-45端子番号
(未使用は省略)
DSUの端子名
機能と極性
(端末側から見た場合)
TA送信+
RA受信+
RB受信−
TB送信−

なお、無免許でISDN工事を行うと、違法である。デジタル工事担任者の免許が必要だ。お前もバラしたりしてるじゃないかって? 回線に接続されない機器については、煮ようが焼こうが犯そうが、何をしても問題はない。



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