クランプメーターで遊ぶ
小ネタをひとつ。
前に予備校で中学生に理科を教えていたときには、自分の好みで電気の問題をよくやった。捻った問題を出す学校などでは、「現実の世界では一体何になるんじゃ?」と首を傾げたくなるような、抵抗器などが複雑怪奇に組み合わさった回路に、電流計とか電圧計をふんだんに散りばめてある回路図が問題にでてくるのだ。
その手の問題には、しばしば「接点Aと接点Bの間の電線を外し、代わりに電流計を取り付けるとすれば、次のうちどの向きが適当か。」というような問いが出てくるのだ。つまり、電流計のプラス側は電源のプラス側に繋げってことが分かってるかどうか。
それは、とっても悲しいことに、学校の実験室に置いてあるような電流計は負の電流は計測できず、ちょっとでも間違えて逆に繋ごうものなら「針が逆に振れてぶっ壊れてしまう」危険性があるらしい(某教科書)。そんないい加減な物にしては値段がやたら高いらしくて、同じぐらいの金額で立派なDMMが購入できる程らしい(某理科教諭)。学校とは、そうとこらしい(某中学校教諭)。
しかし、学校が教えない現実というものは、実はもっと簡単なものである。
何も考えずに、こいつを電線に挟めば良いのだから...
そうして学校教育は、眩いばかりの純白に光り輝く幼き純粋な子ども達を、現実から懸け離れた電流計を用いて執拗までに不安に追い込み、彼らの無垢の心を薄汚れたドブ色に染め上げていくのである...いや、そんな事はどうでもいい。そろそろ本題に移るのだ。
ある日の夕方、仕事も一段落して帰宅の準備をしていたら突然「コレで家の分電盤を計ってみたら」と迫られ、余りに突発的で意味不明なシチュエーションで断り切れずに会社のクランプメーターをお借りしてきた。ただそれだけのことを記事にしたのでは短すぎるので、上記のような御託を並べたわけだが、ハハハ(何がハハハじゃ)。
クランプメーターとは、あなたのCLAMPハマリ度を測定するようなオタク度計では無く(また脱線するー)、電線に挟むだけでその電線を流れる電流を計ることができる大変便利な道具なのだ。早速、分電盤の蓋を開けてみるのだ。
ちょっとボケた写真で申し訳ないのだが、緑色のデカイやつが契約電流の制限用ブレーカー、その右上にあるのが漏電遮断機だ。この漏電遮断機には動作試験ボタンがあり、漏電遮断機が正常に動作している場合はそのボタンを押すと飛んで、電気を遮断する。その試験を1ヶ月に1回以上はやれとの注意書きがあるのだが、そんな事をしている家庭は、果たしてあるのだろうか? きっと、電気メーカーの電流遮断機事業部長さんのお宅もやってないと思う。
緑色のメインブレーカーには、赤・白・黒の三本の線が来ている。これは、単相3線式交流と呼ばれ送電方式で、接地された1本のコールド線(白)を挟んだ2本のホット線(赤と黒)に逆位相の交流100Vを流す。すると、それぞれ赤・白と白と黒の間では100Vが、赤と黒の間では200Vが選られるという大変便利な方式なのである。200V回路は赤と黒の線から取り、100V回路は赤と白又は白と黒のどちらかから分散して取っているようだ。殆どの家庭では、この方式が用いられているのではないかと思う。
そして、ぶら下がっているのが、問題のクランプメーターだ。緑のブレーカーから来ている白い線に挟んであるのがお分かりだろうか? 100V回路の電流を測りたい場合、ホット側に赤と黒との2本の線があるため、どちらにどの電気製品が繋がっているか分からない。しかし、白い線にはどれも繋がってるから、ここを計れば間違い無いってことだ。
取り敢えず、何も考えずに計ってみたら2.82アンペア。電灯や細々とした機器の待機電流だけで3A近いのは結構大きい気がする。ウチは電灯が全部白熱灯なので、蛍光燈などに変えれば少しは減るかも知れない。
電子レンジを "強" でつけてみると、12.52A。先程の待機電流などを差し引くと、大体10Aも食っていることになる。電子レンジの能書きによると、高調波出力は500ワットとなっているから、5〜6アンペア程度ならば納得できるが、電流はだけ倍近く流れている。力率が大変悪いらしい。
次に、200V回路に繋がってる電気コンロ(蚊取り線香みたいなやつ)を "強" でつけてみたところ、10.75Aながれた。その他分を差し引いて8A程度だ。ヒーターの定各によれば、1450Wとある。200Vだと最大で7.25A流れる計算になるから、8Aは良い線だろう。ただの電熱器だから、これで力率が悪ければちょっと恐い。
力率とは:簡単に言うと、電気の使用効率のことです。私もあまり難しいことは知りませんので、難しくは述べません。力率関係の計算問題なんか、必ずヤになります。やめときましょう(笑)
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